《4》境界を育む足浴
足浴を二人で行うと、お湯の中で足が触れあいます。「私の足の上に足乗せて〜」と相手に触れてもらいたい子や、逆に、触れられるのが苦手な子、相手にちょっかいを出す子など反応は様々です。
中には「私は足をこっちにするから、こっちに置いていいよ」と、譲りあう子も出てきます。
《境界の感覚》
足浴は触覚体験を通じて、自分の『境界』を感じるのに役立ちます。
この時期の子どもにとって「『わたし』はここまで」という境界の感覚を育むことはとても大切です。
『わたし』と『わたしでないもの』の肉体上の境界は『肌』です。
ですので、境界の感覚を育むためには、触れ合うことが重要になります。
赤ちゃんは境界の感覚がまだあいまいです。赤ちゃんはよく自分の手をじーっと眺めてお口でなめてますよね。なめるという触覚体験を通じて、自分の手を「発見」し、自分の境界を感じているのです。
幼児期に相手を叩いたり、足が出たり、全身で過剰にぶつかってきたりする子は、自分の境界を感じたくて、無意識に行なっている場合があります。
そのような行為をすると、自分の身体を感じるからです。
その場合、境界の感覚を育んであげるとよいです。
《触覚体験》
この園ではお相撲が流行ることもありますが、友達との適度な触れ合いや「じゃれあい」は、境界の感覚を育むのにとても大切です。
どこまで触れられると不快か、どこまでなら大丈夫か、そういった他者との距離感を学ぶことができます。
現代は、大人も、スマホなど視覚や思考が優先して、触れる、触れられるという体験が少ない傾向がありますね。
満員電車や雑踏で足を踏んだり、肩がぶつかっても気づかなかったりするのも、境界の感覚が弱いからかもしれません。
境界の感覚が鈍っていると、相手の領域に過度に踏み込んでしまいがちです。
逆に過度に境界があると心を閉じて人との関係を遮断してしまいます。
触覚を通じて「ここまでが私」という境界の感覚が育まれると「相手にも境界がある、だから相手も大切にしよう」ということが無意識の領域に練り込まれます。
《境界は安心》
境界があることは、子どもの助けにもなります。
境界に囲まれていると安心するのです。
例えば、子どもの頃、好んで狭いところで遊びませんでしたか?
押入れの中や部屋の隅、外なら傘の中や秘密基地など。
園でも「ついたて」のシルクの中でコソコソ遊んでいる姿があります。
大人の膝の上に座ってくるのもそうですね。大きな身体に守られて、安心するのです。
逆に、あまり広いところに行くと、自分が広がりすぎる感覚になって、不安になる場合があります。
大人も広ーい大宴会場より、ちょっとした小部屋で食事をする方が安心する感覚がありますよね。広すぎる場所で子どもは走り回るのも無理はありません。子どもにとっての境界がなくなっているからです。
ですから、少し落ち着きがない場合は、広い空間ではなく狭い空間で遊べるように促したり、しっかり触れてあげたりすることもあります。
触覚を通じた境界の意識は安心を育みます。まだ自分の境界が不確かなこの年齢の子どもには「あなたの身体はここまでですよ」「大丈夫だよ」と『おおい』でしっかり守るイメージで、丁寧に触れてあげましょう。