《3》言葉の代わりの足浴
《自分を大切にする》
足を拭いてもらった子どもは、隣のテーブルで手浴をし、その後はお話しの時間まであやとりなどをして待ちます。
身体を清潔にすると、さっぱりして気持ちが落ち着き、心地良くなりますよね。子どもたちは、足浴で静けさをまとい、お話しの世界に入っていくのです。
自分の身体を整えることは、『自分を大切にすること』です。また、丁寧に足を拭いてもらうことで、『自分は大切にされている』という印象を受け取ります。
自分は大切なのです。大切にされることは心地よいのです。だからこそ、自分以外の人も、自分と同じように大切にされるべきだという感覚が芽生えるのです。
この時期「自分を大切にしなさい」とか「他の人を大切にしなさい」といった概念を言葉で説明することはありません。
大事なのは大切にされることです。
《子どもへの言葉が少なくなる》
育児はときに言葉が過剰になりがちですよね。日々、子どもに「寒いから温かくしなさーい!」「洗いなさーい!」「仲良くしなさーい!」などと多くの言葉を投げかけがちです。
でも、この園では、こういった言葉を投げかけることはほとんどありません。言葉ではなく、行為を通じて学んでいきます。その行為に導く言葉がけをする程度です。
例えばお湯に足をつけることで、自分の足が冷たいことに気づきます。そして「温かいって心地いいな」と感じます。「きれいにするとさっぱりするな」「大切にされると嬉しいな」といったポジティブな体験が生活の中に練りこまれていて、毎日、毎日、繰り返し、繰り返し、積み重ねるのです。
もちろん全てがうまくいく魔法みたいなことはありませんが、この教育は『子どもへの多すぎる言葉』が少なくなる教育と言っても良いかもしれません。これは大人にとっても大きな助けとなりますよね。