《1》呼吸を導く足浴
寒さが深まる藤野の冬。こども園チトでは毎日『足浴』を行います。
子どもたちがとても楽しみにしている『足浴』。その目的は何でしょう?身体を温めるため?いえいえ。それだけではありません。例えば足を拭く時間も、とても大切です。
今回は、そんな足浴と子どもへの働きについて、保護者が涼子先生にお話しを伺いました。
それにしても、家庭で毎日欠かさず足浴…なかなかできないですよね。でも、涼子先生は冬の間、毎日、毎日、足浴をして、全員の足を一人一人、拭いてくださっています。本当にありがとうございます。
《足浴の時間》
足浴は『外遊び』の後に行います。子どもたちは園舎に戻ると、トイレ、手洗い、うがいをして自分で顔を拭きます。身体のお手入れを済ませたら、あやとりの時間です。
その間に先生はお湯を沸かします。お湯をバケツに注ぎ、カレンデュラオイルを入れたら準備完了です。
先生が子どもの名前を呼ぶと、子どもは嬉しそうに先生の元にやってきて、靴下を脱ぎ、椅子に座ります。そして、そ〜っと、温かいお湯の中に足を入れます。
《深い呼吸》
お湯に足を入れて、子どもが自然とすることがあります。何でしょう?
それは「ふうぅーっ」と、息をはくこと。カレンデュラの優しい香りに導かれるように、外遊びで弾んでいた呼吸は次第に深く、穏やかになっていきます。寒さで縮まっていた足の指は自然と広がり、オイルが心地よくまとわりつきます。肌もしっとり保護されます。
子どもはそんな足の感覚の変化を楽しそうに眺めています。
《拡散と収縮のリズム》
足浴は『外遊び』と『お話し』の間に行います。お話しの時間は、内的な世界です。子どもが物語の世界に深く深く入っていけるようにしてあげたいのです。外遊びの『拡散』のリズムからお話しの『収縮』のリズムへ。足浴はそのリズムをつなぐ役割を担っているのです。
この教育ではリズムをとても大切にしていて、日々の様々な場面にリズムが練りこまれています。外でしっかりと拡散するからこそ、子どもは『お話し』の内的な世界に深く結びつくことができます。それはまるで、穏やかな呼吸のリズムのようです。外遊びで大きく息をはき、お話しで深く息を吸い込む。そんなイメージです。
《静けさが宿る》
温かさが全身に伝わる頃には、表情も穏やかになり、その子に『静けさ』が宿っています。
頬も少し桜色です。
足浴は身体を温め、嗅覚と触覚を育み、呼吸のリズムを整えます。その子に『静けさ』を宿してくれるのです。